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限界営業マンの手記

【Netflix配信中】『モザイクジャパン』感想ネタバレ有りレビュー。”AV好きは必ず観るべし!!”

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「外国の(ポルノ)なんて、ただやってるだけだ。オレたちの国は違う。

超変態先進国だ。」

あらすじ

東京の証券会社をリストラされた常末理市が、生まれ育った田舎町に帰郷すると、故郷はアダルト産業に飲み込まれた町と化していた。

常末理市は両親の薦めで、田舎町には不釣合いな自社ビルを持つ企業GALAXYZに就職。しかし、その職場の女性たちはAV女優であり、就業中もオフィス内やトイレなどいたるところで、絡みの撮影が行なわれていた。一目ぼれした木内桃子もそのひとり。

父母や祖父は、さして利益にならない農業よりもモザイク消しの仕事に熱を入れ、中学時代の恩師や同級生たちもがAV男優や女優へ転職し、田舎町全体がAV産業なしでは成り立たない有様。生真面目な証券マンであった常末理市は葛藤しながらも、AV業界に飲み込まれていく。(wikipediaより)

 ネットで話題騒然だったWOWOWの「モザイクジャパン」が遂にネットフリックスでも配信開始されました。

この作品は日本のアダルト産業を舞台とした、鮮烈なエロスや、男女関係のドギマギ、それだけには止まらず、業界の闇や社会に訴えかけるワードや表現などもてんこ盛りな「社会派ドラマ」として一品の完成度を誇っています。

特に高橋一生さん演じる「九井社長」のエロスと演技がもう絶品だな、と思いました。

この先は作品の見どころや見解などを綴っていきます。

(以下、ネタバレなど続きます)

 

文化としての「アダルトビデオ」

 この作品「モザイクジャパン」では、導入から「カルチャーとしてのポルノ」を提唱しています。

「BUKKAKE」が全国で通じる事や、下着泥棒は日本でしか発生しない犯罪である等、

現在の日本での「ポルノ」の在り方は文化そのものだと説明している節が見受けられました。

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このドラマの舞台であるアダルトビデオメーカー「ギャラクシーズ」。

永山絢斗さん演じる主人公は、都内の証券会社で5年働き退職し、地元に帰ってくる。というプロットでお話が進行して行きます。

親から勧められた再就職先に面接へ行きますが、

受付嬢がどことなくエロいし、

美品と称してどんどんバイ⚪︎とかディ○ドとかロ○ターとかも出てきますし。

そしてお茶出ししてくれたOLの方のポケットにはピンクのアレが。

どことなく異質な会社だと気付き始める永山絢斗さん演じる主人公くんですが、いや遅すぎるでしょう。笑

AVをこよなく愛している男性諸君なら「あ〜(笑)」となるワードや表現がてんこ盛りです。ゾンビ映画におけるエンジンの掛かりの悪い車や、サメ映画における海水浴を楽しんでいる家族連れ。

”ポルノ”の様式美。カルチャーとしての”ポルノ”がコメディタッチで描かれています。

 

 

「モザイク」で隠された矛盾。

エロエンターテインメントとしての側面を見せながらの導入が終わると、

社会への皮肉が、高橋一生さん演じる「九井社長」の痛烈なワードとして繰り出されていきます。

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「モザイクしたからって本番しているのに代わりはないじゃないか。」

「モザイクかけたからって売っていいっていう法律はないじゃないか。」

「売春は禁止されているのにソープランドはある、賭博は禁止されているのにパチンコ屋はある。」

「なんでだ?どうしてだ?」

「そういう”テイ”でやってますよ、っていう事なんだよ。」

 等々…。

第一話から鋭いメスで現代社会の”矛盾”を提訴・解剖していく九井社長。

体裁は守る。しかし、そこに秩序はなく、ただそれだけ。

その悪しき習慣は業界全体のみならず、社会に蔓延る”よどみ”そのものなのです。

作中を通して、彼自身が提訴したこの”よどみ”の問題に九井社長自身も翻弄されていきます。

 

 

鮮烈に描くセクシー女優の生涯、成功と破滅。

ハマカワフミエさん演じる「木内桃子」さん。彼女はギャラクシーズで総務のOLとして働く側、(というか本業?)専属の企画単体女優として活躍中のセクシー女優です。

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永山絢斗さん演じる主人公は、彼女に想いを募らせるうち、無修正ビデオメーカーの社長になり業界の”よどみ”にディープに浸かっていくのですが、

彼女を通して、”セクシー女優”の生涯も描かれていきます。

「この仕事してると、3回顔が変わります。デビューしたとき。

 お金手にして、根っからのAV女優になったとき。

 売れなくなったときです。」

「AV女優になるのは、アイドルになるより、ずーっと難しいんですよ。

 日本にAV女優が何人いるか知ってますか。1万人です。

 8000人くらいですね、余ってます。で、

 その中で単体女優になれるのは、ホントにちょっとです。

 アイドルはブスでもなれるけど、単体女優はなれません。

 単体さんは、かわいいのに出てるんじゃなくて、

 かわいいから出られるんです。」

など…。

社会通念というか、一般的なセクシー女優への偏見などを真っ向から否定する台詞などが一際目立ちますね。

「この子可愛いのになんでAV女優なんてやってるんだろう?」という時代は終わり

「可愛いからAV女優になれてるんだ。」という時代なのです。そういうレベルで、アダルトビデオのカルチャーは我々の社会に浸透しているのだと再認識させるような、そんなシーンもてんこ盛りなのです。

 

総評

 エロエンターテインメントとしてのコメディタッチな表現のみならず、

ポルノというフィルターを通した”社会の矛盾”、”よどみ”に翻弄される男女を鮮烈に描いた作品です。

私的な見解で申すと、もうキャスティングが最高。

最近「僕のヤバイ妻」を今更ながら見終わり、高橋一生さんの演技に惚れ惚れしていた私ですが、このドラマでさらに魅入られてしまいました。独特の間や演技の緩急、本当に”息を飲む演技”といった感じですよね・・・。

 そして脚本家による”ポルノ産業”という真面目なイメージからかけ離れた(?)舞台から描く社会への問いかけ。深い。深すぎる。

セックスという崇高な人間の行為はカネになる。それをビデオに焼き付けてモザイクをかけて売れば儲かる。たかがモザイクがあるだけなのに、隠されているのは性行為の様子だけではなく、もっともっとドス黒い欲望や私欲が隠されているのだ。

このドラマの脚本を手がけた坂元裕二さんはこうコメントで述べています。

幾重にも重ねられたモザイクを消しながらわたしたちが見つけたものは、この国の社会システムそのものでもあります。モザイクとは何か、モザイクの向こうには何があるのかないのか、モザイクをかけているのは誰か、そんなことをこの物語の中で考えていただければと思います。

モザイクジャパンというタイトルですが、

内容にはモザイクをかけていません。

 もう一度言います。深い。深すぎる。

文化としての”アダルトビデオ”、モザイクで隠された社会の”よどみ”、そこでまぐわう男女の欲望。

事細かに提訴されたテーマをしっかりと向き合い、

そしてしっかりと表現されていて、どことなく切ない作品だと思いました。

だからこそAV好きは必ず観るべし。きっと見方が変わる、、と思います。