営業しかない

限界営業マンの手記

ラブリーサマーちゃん「ベッドルームの夢」を科学する

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今日は真面目?なまいにちたなか

 

 

 バレンタインデーは終わりました。多感な小学六年生というあの頃、その2月は、いざ中学生になるぞ、という時期で不安や期待が胸いっぱいに広がっていたことを覚えています。特に僕の中学校は当時ヤンキー勢ぞろいな学校でした。隣町の中学校と抗争をしたり、荒れた中学生が街中を原付で暴走していたり、親切な地元の商店のおばちゃんが煙草を売って捕まってしまったり、なんかへんな時代だったな、と思い返すたびに思います。

 そんなカオスだった頃のバレンタイン、僕は女の子からチョコをもらうのに必死でした。とにかく、チョコをよこせ。チョコがめちゃめちゃ好きなわけでもない(いや、結構好きだけど)。それは男の勲章なのです。チョコをもらった数は、一般成人男性における年収くらいに思っていました。チョコの数をたくさんもらえるやつは、すごいやつなんだ。成功者なんだ。そう思い、いろんな女子に営業をかけていたことを思い出します。今年は、伴侶から愛のこもったチョコレートをもらいました。美味しかったです。

 


ラブリーサマーちゃん「ベッドルームの夢」Music Video

 

 僕が本当に作り出したかったサウンドは、この曲なんだと思います。ちょうど、ブログを書こう、と意気込んだ時に流れた曲がこれだったのです。ラブリーサマーちゃん、略してラブサマちゃん。彼女の実態は正直知りませんが、歌詞の感じは少し寂しいですよね。

 今日のブログは「ラブリーサマーちゃん」を科学してみようと思います。

 

 まず、サウンド

PVの冒頭では、スタジオ感やライブ感のある、ある意味生々しいスタートで始まります。メロウですがクランチがかったギターサウンドも、ハイゲイン気味なベースも、パワーのあるドラムも、きのこ帝国みたいな、シューゲイズされているサウンドかな、という認識をしました。

 バースとしては、Aメロから間奏、またAメロからのサビとなります。インディーのバンドにありがちな刻むようなAメロからドラマチックな劇的な構成を彷彿とさせますが、意外にもサビへの導入はキメがある程度あるだけで、サビ自体は流れるように流動していきます。だからこそ、ラブリーサマーちゃんの唄がなんの抵抗もなく、安心して聴けるなあ、と思いました。

 間奏が終わり、2番のAメロに至るまでも平坦といえば平坦ですが、Aメロ後のギターソロのようなセクションは曲の雰囲気全体を踏襲しつつ、エモーショナルさを演出しています。オクターブ奏法でかき鳴らすギターは聴いていて気持ちいいし、走り出したくなるようなサウンドメイクになっています。

 そしてラストサビへの導入も、此れと言って転調やキメなども特になく、流れるように曲のラストスパートを迎えます。だからこそ、アウトロが寂しく去っていくような、名残惜しい印象を受けます。正直、歌詞をしっかり聴く向きの曲ではなく、雰囲気を楽しむような、バックグラウンドミュージックに向いてると僕は思いました。歌詞から生み出される世界があるからこそ、曲に反映されているのだと思います。

 

 続いて、歌詞。

 最初のAメロは、キーワードに注目していきたいところです。歌い出しからは、物語の”起”を物語っていますので、単語1つ1つをつなげていくと、「失恋」等といったメッセージが受け取れます。お別れしてしまった人との思い出の品。手紙を涙でにじむほど読み返していたのに、燃やしてしまったり、四葉のクローバーを放り投げたのに、追いかけていたり、失恋した時の「忘れたい」という気持ちと「忘れたくない」という気持ちのせめぎ合い。そんなような印象を受けました。

 さらにAメロに戻り、主人公は「このままじゃダメだ」という決心をします。前述のAメロを踏まえ、次は前向きに、錆び付いたドアに手をかけ、「なるようになるさ」とポジティブなワード。そこから、サビへの導入が始まります。

 初のサビでは、ついに曲名にリンクする「ベッドルーム」が唄われます。「君が口ずさむメロディー」の”君”は誰なのか考えましたが、仮定したのは「失恋した第三者(主人公)」ということにしました。失恋した「君」に対して、Aメロ2の節から、ラブさまちゃんが諭すようなメッセージ。

 寂しいベッドルームで君が口ずさんだところで、お別れしてしまった人には届かない。けれど、あの子にも届いたらいいね、というやさしい言葉を投げかけています。

夜は明けるけど、それと同時に君もガソリンを燃やしたように(爆発的にというのはあまりにもナンセンスなのだけれど)、君は走り出していく。だって、走り出せば、なるようになるから。

 「君」が走り出した光景は、2番のAメロに続きます。一人のベッドルーム、部屋から抜け出した「君」にはきっと良いことがある。奇跡だって起こるに決まってる。絵本みたいなことだって起こせるよ、という前向きに背中を押しているようなメッセージです。

 そしてサビ2、一人寂しい部屋だったとしても、ここからストーリーが始まっていく、「君」のいるベッドルームの定義は、劇的に変化していきます。「シンデレラ」というワードは、前述の”絵本”にも通じるように、素敵なこともきっと起こるよ、という意味でしょうか。サビは2回し続き、最初は自暴自棄になっていた「君」も、きっと前を向いて、その先を歩いて生きていけば、誰にだって絵本のような事は起こるんだ。なるようになるのだから、ひとりぼっちでも、そんな勇気一つあれば、物事は劇的に変化していくのです。走り出した君はやがて、ラブさまちゃんの世界を良い方向へ逸脱し、「「君」の走る背中が遠くなる」のです。

 

 総評としては、個人的にはかなりグッときた曲でした。

サウンドメイクも結構どストライクではありますし、何と言っても邦ロックのインディー感を踏まえた歌詞作りもすごい好みです。

 何より、ラブさまちゃんの声がうまい具合にマッチしていますし、間奏のハミングのメロディ作りも乙なものです。脳裏に焼き付いて何度も聴きたくなるような楽曲だと思いました。近年の音楽は、劇的な変化だったり、奇を衒ったサウンドメイクが評価される節がありますが、それと逆行してはいるものの、ラブさまちゃんのメロディ作りは決して古さを感じさせない印象を受けました。

むしろ、どことなく懐かしいからこそ唄が映える。寂しい唄かと思いきや、すごい前向きなのもとても好印象でした。

もう一度言いますが、かなりグッときた曲でした。これからもラブさまちゃんを聴いていきたいものですね。

 

おわり