営業しかない

限界営業マンの手記

恵方巻き

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(まいにちたなか用の画像つくった。)

 

 「今年の恵方は東北東です」ニュースやウェブメディア、朝礼の時の社長までもが、どっちが北か南かを気にしている2月3日、節分。

不動産屋でもない限り、こんなに方角を気にする事ってあんまりないかもしれないなあ、と東北東がどっちかを確認しながら、思っていた。

 

 恵方巻きの文化って、急速に発達したなあ、と思った。バレンタインと同じで、販促キャンペーンの一部だろうし、作られた伝統感は尋常じゃない。イオ○もセ○ンも、こぞって恵方を巻いている。もれなく、恵方を巻いているのだ。

 

 しかし、その作られた伝統に触発され、扇動され、そそのかされ、踊らされるのが我々消費者であって、広告の影響は甚大だ。いわゆる”巻物”は正直好きだし、そんだけ売られてたら食べたくなるし、実際今日は既に食べた。

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恵方巻きを食べていると、思い出すエピソードがある。

 

 

 あれは高校2年生の2月。甘酸っぱい高2の夏を過ぎ、3年生になろうとしていた。受験・就職。それらを控えている僕らは、現実から逃れるように、何か色々してたと思う。軽音部だったから、部活に熱中してみたり、ゲームに熱中してみたり、バイトに没頭してみたり。

 

 そんな多感な時期に来た2月3日、節分。

僕は学校を早退し、ある場所へ向かっていた。派遣のバイトだ。

日当1万5千円。15時から21時まで、ひたすら恵方巻きを売るという、駅とかでよくある外にあるタイプのお店だ。そこで、売る。恵方巻きをひたすら。売る。

 

仕事の内容はいたってシンプルで、簡単だった。注文を受け、レジで精算し、袋に詰めて渡す。コンビニの簡易版みたいなもので、コンビニのバイトもしてたから要領はわかってたから楽だった。

 

 終業まで残すところわずか30分の、20時30分。その人は突然来た。

 

身長180cmくらいある、巨漢の、西洋人。恵方巻きを2m先くらいからじっと見ていた。20時30分で、コアタイムよりは人通りも少なくなったため、その巨漢の西洋人は特段目立った。西洋人だし、巨漢。目立たないわけがない。

 3分くらいスマホをいじりながら、ナウでヤングな恵方巻きショップを凝視している。流石に目のやり場に困った僕は、彼にアクションを起こすことにした。しかし、西洋の言葉は僕にはとんとわからぬ。(どうしたんだい?)という気持ちを目で訴え、軽く会釈した。

 

 すると、その西洋人の眉毛が大きく動き、明るい表情になった。そして、2mをずっしりと、歩く。牛歩とはこのことかもしれない。「コレナンテヨミマスカ?」とかって言ってたと思う。焦った僕は「エホウマキ!!」(イントネーションは↘︎↗︎↘︎↗︎↗︎)と答えた。巨漢の西洋人は「ウン?」と言った。理解はできていない、確実に。

 

 要は、恵方巻きを説明しろ、と言われているのだ。巨漢の西洋人に。しかし恵方巻きという日本の文化を詰め込んだものを、西洋人に説明するという、難題。しかし機転を利かせた僕は「…スッシロール!!」と言った。

寿司のロールしたやつ。それはあまりにも明確で、西洋人も「オォ!」とか言ってた。並んでる人がちょっと笑ってた。3本指を立て、西洋人は笑顔で購入してた。

 

 あの西洋人は今どこで何してるんだろな、とか思いながら東北東を向いて、恵方巻きを食べた。あの西洋人はどっち向いて食べたんだろう。ちゃんと恵方向いたかな。