営業しかない

限界営業マンの手記

本田翼の目覚まし時計が、欲しい。

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 突然だが、僕はこれを必ず手に入れようと思っている。理由は、本田翼だからだ。どうしてもこの目覚まし時計が欲しい。だってすごい可愛い。熱狂的なファンってわけでもないし、正直そんなに意識して本田翼を見ることってあんまりないけれど、このキャンペーンを知った際、僕は胸を撃ち抜かれた気分だった。「あぁ、これいい…」。若かりし頃聴いたポルノグラフィティ、あの人だけが心の性感帯って歌詞は、なんとなくエッチな意味だろうな、と思っていたが、それは違うんだ、と同時に理解した。僕の物欲が指先でくすぐられているような、そんな気分だった。本田翼がめちゃめちゃ好きなわけじゃない。が、欲しい。可愛い。

 幸いにも引っ越しの予定がある。チャンスだ。しかし、私は不動産屋だ。このキャンペーンは不動産会社の反響数(お問い合わせの数)増加促進のためのキャンペーンであって、いわゆる販促なのだ。そして僕は、その業者側。BtoCにおけるB。正直物件も自分で探して、自分でオーナーと交渉して決めてしまった。つまり、僕はそもそもキャンペーンのステージにすら立てていないのだ。本田翼に起こしてもらえる朝、それは僕には来ないのだろうか。

 いや、まだ方法はある。前述の通り、僕は不動産屋だ。キャンペーンを実施しているHOME'Sの担当とは、正直めちゃめちゃ仲がいい。このアドバンテージを使わない手はないだろう。そう、貰うのだ。悪くない作戦だと思う。思い立ったが吉日だ。負けたらゴミだ。なんとしても本田翼を手に入れるんだ。いつか迎える朝を待ち、僕は早速HOME'Sの担当に当たった。

 

 打ち合わせ当日、今後の会社としての取り組みを大いに語った。競合他社との競争は熾烈で、もはや戦争だ、と僕は思った。客を取り合い、兵隊達は疲弊し、それでも家は建つ。そこで弊社は、限られた資金力の中、どう戦えるのか。課題に向き合った、HOME'Sの担当営業マンと、本田翼目覚まし時計を入手せんとする、僕。

 「HOME'Sさんも集客に関して頑張ってくれてますよね、ほら、本田翼の目覚まし時計とか。」一瞬空気が淀んだ。「はい」苦笑いした担当営業マン。ちょうど、HOME'Sにかける予算をあげようか、という話の最中だったのだ。きっと僕の気持ちは読み取られている。それでもいい。「めっちゃ欲しいです」その空気の緊張感たるや、筆舌に尽くし難いものがあった。「いやあ…」。

 もらえなかった。どうやら、HOME'Sの社内でも欲しい人はたくさんいるらしいが、入手し得ないような、厳重な保管をされているらしい。それほどまでに本田翼は神聖な存在なのだ。その偶像を容易に入手せんとしていたのは、ツメが甘すぎたと猛省している。

 しかし、僕はいつか手に入れる気でいる。本田翼を諦めたわけじゃない。まだ何か手があるはずだ、と思っている。その日を現実にするために。本田翼に、顔洗ってきな〜、と言われる、そんな朝を迎えるために。